脳科学で考える効率的な学習
強が大切なことは知ってはいるけど、勉強はそれほど好きではありませんね。でもやらなくてはいけません。
それでしたら工夫をして、勉強時間をできるだけ短くしましょう。
テスト前に、
「先生、昨夜は2時まで勉強したヨ!」
「一夜漬けで何とか間に合った!」
と言う人がいます。それでもいいのですが、みんなにとってもっと得な方法を教えます。
その秘密の中心は、睡眠です。でも何もしないで睡眠をとるだけではだめです。
勉強と睡眠を上手に組み合わせてあげるのです。信じて実行できた人は今までより成績が上がりやすくなると思いますよ!!
●眠ると成績が上がる!?
おもしろい実験があります。
語学の勉強をした後すぐにテストを行い、どれだけ点数が上がるかを調べたのです。さらに、いつものように睡眠をとってもらい、翌朝もう一度テストをしてみました。
すると、前日の勉強直後のテストより、さらに成績が上昇したのです!
では睡眠によって点数が上昇したのはなぜでしょう。
眠っただけですから、知識の量は増えていません。知識は脳に詰め込むだけでは、使い物にならないのです。知識が乱雑に蓄えられてしまっていて、すぐに使用できる状態になっていないのです。
蓄えた知識を整理整頓して「使える」状態に変えることが、睡眠の役割の一つです。眠ることによって、知識の量が増えるわけではありませんが、知識の質が変わるのです。
●ひらめきも
記憶だけではありません。「ひらめき」も睡眠が助けてくれることが分かっています。問題に目を通してから眠ると、翌朝にひらめく確率が高いのです。ですから眠る前に、問題に目を通しておくことも重要です。
●眠れなくても
睡眠の重要性を知って、眠らなくてはと思いプレッシャーで逆に眠れない人がいるかもしれません。でも安心してください。睡眠の効果は、「眠る」こと自体が重要なのではなくて、脳への情報を絶って、脳に整理整頓の時間を与えることなのです。実際起きていても、静かにさえしていれば、脳での情報の再生が始まります。
ちなみに眠っている時に学習用の音声を流しながら勉強する、いわゆる「睡眠学習」は逆に効果がありません。睡眠中の脳の邪魔はしない方がいいでしょう。
●一夜漬けの効果
誰にでも一夜漬けでテストに臨んだ経験はあるでしょう。一夜漬けとコツコツ学習のどちらが記憶に効率的なのでしょう。
またまたおもしろい実験があります。
一夜漬けとコツコツ学習の2つのグループに分かれ、単語の組み合わせを覚えてもらいました。学習した全体の時間はどちらも同じです。
一夜漬けはテスト前日に一気に詰め込み学習をしたのに対して、コツコツ学習はテスト前日とさらにその前日の2日に分けて勉強しました。
驚いたことに、どちらのタイプでもテストの成績は変わらなかったのです。
ところが、テストの次の日に、もう一度テストを行ってみました。抜き打ちテストです。
するとコツコツ学習の方が点数は良かったのです。これは、テスト前日とその前日の間に睡眠が挟まったので、記憶が定着したのだと考えられます。
ところで、一夜漬けでもテストの点数に変わらなかったということには注意が必要です。
なぜなら、一夜漬けタイプの人は「自分は要領がいいなあ。だって、コツコツ勉強した人と同じ点数が取れるのだから」と思ってはいけません。
テストの点数は同じですが、記憶に残る量が違います。長期的な「実力」では、毎日コツコツと勉強するタイプが有利です。
●眠る前は記憶のゴールデンアワー
睡眠の効果を得るために、どのような時間帯に暗記するといいのでしょう。
朝に暗記をしたグループ(朝型暗記)と夜に暗記をしたグループ(夜型暗記)で、3つのテスト(①覚えた直後 ②12時間後 ③24時間後)をしました。
朝型暗記のグループでは、12時間後のテストの成績はずいぶん低下しています。睡眠をとった24時間後のテストでは多少回復します。
ところが、学習直後に睡眠をとる夜型暗記のグループは、12時間後の成績が朝型暗記では到達できないくらい点数にまでアップしました。
つまり『覚えたら忘れないうちに眠る』…これが鉄則なのです。
ですから暗記に関していえば、朝型より夜型の方が効果的です。就寝時間の1~2時間前が、脳にとっては記憶のゴールデンアワーです。
ただし「夜更かし」はダメです。眠る前に暗記したとしても、いつも通りの時間に眠れるようにしましょう。
●いつどの教科を勉強すると効果的?
睡眠の効果を得るためには、どのような時間帯にどのような勉強すればいいのでしょう。
眠る前は、記憶が必要な「英単語」や「社会」「理科」の暗記などをしましょう。
午前中は、逆に論理力や思考力が要求される科目、例えば「数学」や「国語」、「理科」の応用問題などを学習しましょう。
起床直後の時間帯は、前日の復習をしましょう。脳に記憶が定着しやすくなります。
●必要な睡眠時間
では1日にどれくらい眠ればいいのでしょう。睡眠時間は人それぞれですので、簡単にはいえませんが、小学生や中学生でしたら7~8時間がよいでしょう。
睡眠中に成長ホルモンが出て、皆さんの体を育てますが、同時に脳も育てます。つまり、睡眠不足の人は、体が成長しないだけでなく、脳も成長しません!
●睡眠は学力を養う!
それまで勉強してもさっぱり分からなかったことが、ある日突然理解できるようになったことや、例えばピアノのレッスンで、どんなに練習してもうまく弾けるようにならない部分が、翌日になると急に弾けるようになった経験はありませんか。
これはレミニセンス(reminiscence)効果と呼ばれ、眠っている間に記憶がきちんと整理整頓される現象です。
つまり学習した内容がレミニセンス効果によって充分な効果を発揮するためには、ある程度の時間が必要であることになります。直前に覚えた知識よりも、数日たった知識の方が整理されていて、脳にとっては利用しやすい記憶になっています。
もちろん、レミニセンス効果を期待して眠ってばかりの怠け者になってはダメですが、日々の勉強を効果的にするために睡眠をしっかりとることは大切です。
●睡眠をとると学校の授業がよく分かる!
厳しい部活の中学生の中には、勉強時間が少ないのに、成績優秀な生徒がいます。頭がいいから――と思いがちですがそれだけではありません。このような生徒たちは、中学校の授業をよく聞いて、授業中に大切なことを覚えてしまいます。
例えば英語の授業中の音読では、ただ読むだけでなく、読みながら覚える努力をしたり、社会では授業中に重要語句に緑ペンを引いて、後で暗記しやすいようにしたりするそうです(このように生徒が実際に言っていました)。
家に帰ってからの勉強時間の少なさを、中学校の授業中にカバーしているのです。
どうして授業中にこんなに集中できるのでしょう。それは生活のリズムがしっかりとできているからです。その中でも中心になるのが、やはり睡眠です。しっかりとした睡眠時間を確保するために、何時までに宿題を終わらせる…のような生活のリズムができるのです。
●授業は休憩時間?
部活の朝練で疲れて、授業中は休憩タイムと勘違いしている中学生が多くいます。中には目を開けて眠れる生徒もいます(本当です)。しかし、これでは成績は上がりません。
成績が上がらない生徒は、学校の授業をしっかりと聞かないので、勉強が分からなくなり、Be-1で基本から教えてもらいます。
学校で何を勉強しているの?と聞きたくなります。
●学校の授業が一番大切!
学校で毎日6時間も授業を受けているのですから、この時間を一番大切に使いましょう。
そして学校で分からなかったところを、家庭学習やBe-1で補うようにしましょう。
そのために睡眠時間をしっかりと確保できるように、自分に合った生活のリズムを作りましょう。
特に中学1年生はまだまだ小学生の生活のリズムのままです。中学生は、部活・テストと小学生より忙しいので、意識して生活のリズムを変えないと、時間が足りなくなり、睡眠時間が取れなくなり、成績が上がらなくなるので気をつけましょう。